おかあさん についてのエッセー 「うどんはだしが勝負」

わたしとおかあさん:大阪市平野区、主婦・牧野紗智子さん /大阪
 ◇母からもらっただし汁の味--牧野紗智子さん(73)

 「お母ちゃん、お母ちゃんて!」。振り向く母の笑顔が大好きでした。40キロ足らずの小柄な体ですが度胸はどっしりと重く、料理の腕は天下一品でした。

 終戦の翌年、34歳の若さで夫に先立たれ、その混乱の中でまだ小学生だった私と妹を育てました。食堂というより、“うどん屋”が似合う小さな店が生活の糧でした。

 母は「うどんはだしが勝負。そのだしに生活がかかってるんや」が口ぐせでした。昆布とカツオが煮え立つ湯気の向こうで、右に左に首をかしげて真剣にだし汁の加減をみていた母の姿--。一生懸命働く女の美しさを感じました。「これこそ私のお母ちゃんだ」と叫びたい気持ちがあふれそうになりました。母を悲しませるようなことは絶対してはいけない--。その時、肝に銘じたのです。

 「店のうどん大好き」と、日々食べに来てくれたお客さんの一人が私の夫です。“母のだし”があったから、夫にめぐり会えたことを大変幸せに思っています。これは母がくれた最高の味です。

 母が亡くなって21年がたちました。あんなに気丈で、どんな病気も逃げていくのが自慢だったのに……。しかし、母らしく、精いっぱい生きて頑張りぬいたと、満面の笑顔で私たちを見守ってくれていると思っています。

 いつも母が大切にしていた言葉を、今年金婚式を迎えた私が感謝を込めて言います。

 「ちゃんとだしをとって、旬の食材を生かして心を込めて煮物を作ってるんよ。それが妻の大事な役目」。

==============

 読者の皆さんから「おかあさん」についてのエッセーを募集します。約600字にまとめ、Eメール(at‐osaka@mbx.mainichi.co.jp)か郵便(〒530-8251 住所不要)、ファクス(06・6346・8444)で、おおさか支局まで。住所、電話番号、氏名、生年月日、ご職業を明記してください。

毎日新聞 2008年4月16日 地方版

毎日 jp


[PR]
by IPE-OsakaOudon | 2008-04-22 20:14 | 大阪おうどん情報


<< 世界麺フェスタの来場者、4日間... 京都お料理教室 ~春のランチ~ >>